千葉道場ドローン部、初のオンライン合宿を開催!!
はじめに
DRONE FUNDは、2020年10月30日(金)、第5回千葉道場ドローン部合宿を開催しました。当初は2020年2月の開催を予定していましたが、新型コロナウイルスへの懸念から延期となり、この度ようやく8か月遅れでの開催が実現。ドローン部合宿史上初のオンラインとオフラインのハイブリッド形式を採用し、投資先スタートアップの経営陣61名が参加しました。
この記事では、合宿内コンテンツのうち、最終セッション「2025年の社会実装~ドローン前提社会の未来像~」の模様について紹介していきます。
千葉道場は徹底した秘密主義を敷くことで、同業のスタートアップ経営者が集う場であっても、相互にGIVEをできる環境づくりに努めてきました。合宿の内容をこれまで外部に公開してこなかったのも、そのためです。しかし今回は、本合宿の幹事である鷲谷聡之さん(株式会社自律制御システム研究所 代表取締役社長兼COO)の提案にもとづき、最終セッションの模様については、特別に一部公開することとしました。
さらに、本記事の目玉として、ディスカッションの内容をリアルタイムでまとめたグラレコがあります。グラレコ制作のプロチームである株式会社dot様に依頼し、全セッションにおいてグラフィック・レコーディング(以下、グラレコ)を1枚ずつ作成し、ディスカッションの視覚的な記録を試みました。
なお本グラレコ企画は、DRONE FUND1号・2号LP投資家である株式会社DGベンチャーズ様に特別協賛をいただき実現いたしました。この場を借りて、改めて深く感謝を申し上げます。
第5回千葉道場ドローン部合宿の「集合写真」
ディスカッションのテーマ
千葉道場合宿のトリを飾る最終セッションのトークテーマは、ずばり「2025年の社会実装 ~ドローン前提社会の未来像」。本セッションのモデレーターであった鷲谷さんには、企画準備やスピーカーとの打ち合わせを積極的にリードいただきました。
当日は鷲谷さんが残念ながら急遽欠席となってしまったため、DRONE FUND共同創業者/代表パートナーの大前創希がモデレーター(代打)として登壇し、スピーカーとして、プロドローン代表取締役社長の河野雅一さん、トラジェクトリー代表取締役社長の小関賢次さん、株式会社テラ・ラボ代表取締役社長の松浦孝英さんの3名を迎えることとなりました。
ディスカッションのターゲットは2025年。近すぎず遠すぎない5年後(2020年10月時点)の未来における社会実装の未来像と、それに向けて解決しなければならない課題に関して活発な議論が交わされました。
本セッションのグラレコ(転載厳禁)
【1】2025年における社会実装のイメージ
「ドローン・エアモビリティ前提社会」の実現に向けて、2025年は重要な年次であるということは言うまでもありません。まず2022年度には「ドローンのレベル4(有人地帯での目視外飛行)解禁」、そして2023年度には「空飛ぶクルマの商業化開始」が予定されています。したがって、2025年においてはこれらの技術、サービス、ソリューションの社会実装がますます期待されている、と言えるでしょう。ディスカッションは、スピーカー3人によるその具体的なイメージの共有から幕を開けました。
まず、日本のドローン産業の黎明期から高水準なドローンの研究・開発をリードしているドローンメーカー 株式会社プロドローン を率いる河野さんは、「特に物流分野での普及は大きくなっているだろう」「コストの問題はあるが、ニーズが確実に増えてくる」という予測を示しました。
次に、大型の固定翼機を開発し、測量や防災分野での活用を目指す 株式会社テラ・ラボ の松浦さんは、「有人機の無人化、そして無人機への置き換えが起こる」と語りましたた。さらに、そのために必要な課題として「機体の位置把握」「ADS-Bの採用」「地上管制の強化」「FAAの型式証明取得」「VFR飛行対策」「自機周辺の把握」なども提示しました。
最後に、3次元地図をベースとしたドローン用の航空管制ソリューションを開発する 株式会社トラジェクトリー の小関さんは、「空のインフラ」を整備している立場から、「都市部でも、地方でもドローンが活躍できる場所が増えるだろう」「多くの機体が飛ぶことになれば、自律飛行ドローンがますます必要になるだろう」との見立てを示しました。
テラ・ラボ×DRONE FUND オリジナルイラスト(2020年制作)
【2】実現するために解消が必要なギャップ
では、その実現に向けて何が課題となるのでしょうか。スピーカーからは、まず機体に関して、大きく「安全性」「耐久性」「対環境性能」の3点が挙げられました。ドローンが人の目や手が届かない場所でこそ力を発揮する以上、ある程度のヘビーデューティーには耐えなくてはなりません。だからこそ「世界で飛ばせるものを作ろう」という姿勢は、ドローン市場を拡大していくうえで不可欠なマインドセットとなります。
「毎日使うための仕組みづくりをしていかなければいけない」という指摘も重要です。背景には、全国的にドローンの実証実験が増えている一方で、それが具体的なビジネス化に至ったケースがまだ少ないという実態があります。種を蒔いて、全てが芽を出すとは限りませんが、実装に向けて物事のサイクルを速めていく必要はあると言えるでしょう。
そして、これらのハードルを乗り越えていくために必要な姿勢として挙げられた、「ゼロリスクマインド」との向き合い方については、一同が強く同意する場面として印象的でした。
そもそもドローンやエアモビリティは、地上型のロボティクスとは次元の異なるリスクと隣り合わせです。空の先輩である航空機は、100年以上もの年月をかけて、事故と改善を何度も重ねながら、社会からの信頼を勝ち得てきました。もちろん「安全」と「イノベーション」を、安易なトレードオフの天秤にかけて、イノベーションのために安全をないがしろにするようなことがあってはなりません。試行回数を圧倒的に伸ばし、社会からのフィードバックに対して透明性の高い説明を重ねていかないことには、デイリーユースにも応えつつ、有事にも頼りにされるポジションを獲得することは難しいと言えるでしょう。
ゼロリスクマインドの話に戻ります。これは「とにかく脱却すれば良い」という類のものではありません。ドローン事業者も、ドローンを活用したい事業者や行政にとっても、「安全」は何より確保しなければなりません。ただし、空を飛ぶものが伴うリスクと、新しいことを始めるリスクは分けて考える必要があります。どのリスクを許容し、どのリスクを回避するのか、その区別は非常に重要です。
トラジェクトリー×DRONE FUND オリジナルイラスト(2018年制作)
【3】ディスカッションのまとめとして
セッションの最後には、今後に向けて、より希望や期待の込められた議論も、スピーカーから展開されました。特に強調されたのは、大前提としての「正しいことをやっていく」こと、そしてそれを「世間に対してきちんとアピールしていく」こと、この2点です。
ドローンやエアモビリティは、未来社会を象徴するテクノロジーの一つとして、近年数多くのメディアに取り上げられてきました。特にコロナ禍においては、「非接触」「遠隔」でのサービス提供にも注目が集まっており、業界の内外からの反響も増えています。
ただし、課題解決のソリューションとして、ドローンは「数多ある手段のひとつに過ぎない」「決して万能ではない」という点は、改めて一般の読者の方々とのあいだでも確認しておく必要があります。クライアントの解決したい課題を分解していった結果、ドローンが適切なソリューションでないというケースもあるのです。
その意味で、正しく誠実であること。「法令を遵守する」という狭義の意味にとどまらず、クライアントや既存の産業、そして社会一般に対して正しく誠実であること。そしてその上で成果を出し、きちんと世にサービスを届けること。そして人々を幸せにすること。
大企業や政府ではできないことに取り組み、急成長を目指すスタートアップだからこそ、これらの点が改めて重要なのではないか。千葉道場ドローン部合宿の最終セッションは、最後にその大前提を確認し、幕を閉じました。
プロドローン×DRONE FUND オリジナルイラスト(2020年制作)
さいごに
繰り返しになりますが、2022年度には「レベル4」(有人地帯の目視外飛行)の解禁が、そして2023年度には「空飛ぶクルマの事業化開始」が予定されています。だからこそ、ドローン・エアモビリティ前提社会の行く末を占う上で、2021年度は非常に重要な一年です。しかし2021年も、2025年も、あくまで通過点でしかありません。
千葉道場のモットーは、道場主・千葉功太郎の掲げる「Catch the Star」。DRONE FUNDは、引き続きスタートアップと共に、山の頂のかなたの星々を目指して、前へ前へと進んでいきます。
関係者のみなさま、そして日本全国のみなさまには、投資先の活躍や法・規制の動向を中心に、ぜひこの新しい空の業界にますますご注目いただきたいと思います。
Written by Yuta Tsukagoshi(2021/3/31公開)