Drone Fund

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Feature

千葉道場ドローン部 深セン合宿について

(1)はじめに
2019年7月24日~27日、千葉道場®ドローン部の第4回合宿(幹事:株式会社エアロネクスト、株式会社DiPL、事務局:Drone Fund)を開催しました。場所は中国広東省・深圳市。千葉の個人投資先CEO・CXOの集い「千葉道場®本家」の合宿に先駆け、これが初の海外開催となります。
2017年6月創業のDrone Fundは、これまでの約2年間で国内外の約30社に投資してきました。そのCEO・CXOたちのためのクローズド・コミュニティが「千葉道場®ドローン部」。日々の情報交換だけでなく、半年に1度の集中合宿を通じて、明日のドローン・エアモビリティ産業を牽引するための強靭な起業家コミュニティづくりが目指されています。
「まだ見ぬ幸せな未来を創造し、テクノロジーで世界の課題を解決する」をミッションとする千葉道場®には、絶対不可侵のルールが2つあります。1つは徹底的なGiveの精神のもと、自身の知見や経験を他の参加者に提供すること。もう1つは秘密主義を徹底し、合宿中見聞きしたことを口外しないこと。これらのルールがあってこそ、CEO・CXOたちは腹を割って意見を交換し、ときには具体的なビジネス・トークにまで話題を転がしていくことができます。
ドローン・エアモビリティ特化型VCであるDrone Fundの投資先ポートフォリオは、一見すると「競合」同士がひしめいているように映るかもしれません。しかし国内外のドローン・エアモビリティ産業を共に作り上げていく上で、このコミュニティは間違いなく「同志」の集いとなっています。切磋琢磨できる熱量が常に充ちている、それが半年に一度の千葉道場®合宿です。

(2)なぜ深圳か
深圳は広州や香港ともほど近く、ファーウェイ(華為)、中国版LINE「WeChat」を運用するテンセント(騰訊)、そしてドローンメーカー世界最大手のDJI(大疆)が拠点を構えていることから、「中国のシリコンバレー」とも呼ばれています。経済特区指定をはじめとする国の強力なサポートも、これら新興産業の成長を大きく支えてきました。
深圳での合宿開催は、様々なタイミングが重なって実現しました。一番の後押しは、第4回合宿幹事であるエアロネクストの深圳進出でしょう。5月の現地法人設立に伴って構築された現地でのネットワークが、今回の合宿プログラムの方向性を支えたと言っても過言ではありません。その熱量は今回の合宿テーマにも現れています。

“Expand Globally 競争と共創 ~真に世界を目指すため深圳を喰らい尽くせ~”

テクノロジーの分野で圧倒的な成長を続ける中国、そしてドローン・サプライチェーンの最上流部に位置する深圳。そこから何を学び、日本市場はどこに活路を見出すべきか――。今回の3泊4日のプログラムは、準備段階からこれらの強烈な問題意識に貫かれていました。
また今回の合宿では、海外投資先のうち2社――ソリューション・サービスを展開するAerodyne Group(マレーシア)、高ペイロードのマルチコプター開発を行うGriff Aviation(ノルウェー)――から、初めてのドローン部合宿参加者を迎えることができました。
日本語、中国語、英語が飛び交う、今までになくグローバルな環境と参加者構成。そして3泊4日のハード・スケジュール。「これでもか」とばかりに濃密な第4回合宿は、7月24日(水)の午後、DJIショールームの見学から幕を開けました。

(3)DAY1(7月24日)
香港空港からのフェリー、香港西九龍駅からの新幹線など、複数のルートで中国本土に入国した一行の集合場所は、地下鉄2号線「科苑」駅からほど近いDJIショールーム(深圳市南山区)。Phantomなどの歴代機や、先日発売されたばかりの教育用ロボットRoboMaster S1等が並ぶなか、現地職員による製品解説をうかがうことができました。
その後は深圳の雰囲気に触れるべく、「互」の字をかたどったテンセント本社ビルなどがある「深圳湾創業広場」(深圳市南山区)を観光しました。この一帯にはスタートアップやそれをサポートする企業や組織が集積し、テンセントの創業者・馬化騰の母校である深圳大学などの教育機関も目と鼻の先にあることから、産官学の人材交流が非常に活発だと言われています。一行は世界最大の自転車シェアリングサービスのmobikeや、顔認証で決済するKFCなど、大規模に社会実装されているIT技術の一端を体験しました。
懇親会では、千葉道場®道場主で、Drone Fund代表パートナーの千葉功太郎からの挨拶につづき、Aerodyne Group CEOのKamarul氏からのピッチをいただきました。深圳のうだるような蒸し暑さを軽く上回る、そんな熱気にあふれた合宿初日となりました。



(4)DAY2(7月25日)
翌朝7時30分、一行はバスに乗り込み、最初の目的地であるEHang社へと向かいました。企業視察を通じて、技術や事業について担当者との意見交換をするためです。2・3日目のスケジュールは、このような深圳市・広州市のドローンスタートアップ5社への視察を中心として構成されていました。これも例年の合宿とは異なる試みの一つです。
とはいえ、日本有数のドローン・エアモビリティのスタートアップ、そのCEO・CXOクラスがベンチャーキャピタル(VC)と共に団体で訪問するとなれば、もちろん警戒されてしまいます。しかし不都合な話ばかりではありません。こちらもわざわざ「お世辞トーク」をするために、深圳まで足を運んだわけではないのです。
そんなこちらの熱量を支え、さらに盛り上げてくれたのは、「ナビゲーター」によるバス移動中のセッションです。訪問先スタートアップ1社につき、その業態に近しい千葉道場®メンバー2社に、訪問先スタートアップの強みや弱みの分析をふまえて、視察の「見どころ」を全体にインプットしてもらう時間を設けたのです。ナビゲーターの方々のおかげで、訪問前後のバス内では充実したインプットとアウトプットをすることができました。
以下、訪問先スタートアップを紹介していきます。しかし千葉道場®の秘密主義に則り、簡単な企業概要と訪問時の写真のみ掲載しております。ご了承ください。

2014年創業のEHang(広州市黄埔区)は、1~2人乗りの自動操縦の旅客用および貨物用の低空飛行航空機を開発しているスタートアップで、拠点を置く広州市協力のもと、ドローンタクシー事業の開発を著しいスピードで進めています。企業の首脳陣が笑顔で搭乗する動画からはEHangの自信がうかがえました。

2007年創業のXAG(広州市天河区)は、中国の広大な農地=市場を活かし、農業用ドローンの開発に特化することで飛躍を遂げているスタートアップです。国内農業ドローンシェアの5割を占めるといわれ、人口減少・高齢化の著しい中国農村部での農業スマート化に多大な貢献をしています。農薬散布の機構などのテクニカルな部分から、データ収集の方法から事業展開のストラテジーまで、千葉道場®メンバーから高い評価を得ていました。

バスの移動中であっても誰も寝かせない。時間を余すことなく使う。1分ごとの演出を設計する。それが、千葉道場®――。EHangとXAGの訪問を終えた一行は、広州から深圳へと戻るバスの中、Drone Fund代表パートナーの大前創希の進行により、「ライフラインチャート」を用いた自己分析セッションを行いました。
ライフラインチャートとは、横軸に時間、縦軸に気持ちの上げ下げをとった表に、自身の半生のアップダウンをグラフ化して書き込んだもののことです。隣席の人とペアを組み、自身の半生を紹介しながら、自身の価値観や過去の意思決定のプロセスなどを客観視していきました。ペアを変えながら、約1時間以上時間をかけるなかで、自明視していた自分の像がほぐれ、新しい輪郭が見えてきたり、自分のことを表す別の語彙を発見したりする。頭も体もしっかりと疲労する、充実した時間となりました。

その夜は、夕食を兼ねて、翌日の訪問先2社(MMC、SMD)、その他の現地スタートアップ3社(Shenzhen YouYing Technology、D. Y. INNOVATIONS、LeiShen Intelligent System)をゲストに迎え、ミートアップセッションを行いました。ゲスト側も千葉道場®側も関係なく、全社が通訳を介しながらピッチを行い、時には互いに英語で談笑し、食事を囲む。酒を呑む。思い思いの交流が図られながら、合宿第2夜は更けていきました。

5)DAY3(7月26日)
3日目になっても、相変わらずの湿度に包み込まれ、そして容赦のない日差しが一行の首筋をジリジリと焦がします。
2010年創業のMMC(深圳市宝安区)は、XAGとは対照的に、複数のユースケースに対応した産業用ドローンを幅広く製造することに注力しているスタートアップです。DJIのスピンアウト・メンバーが創業した企業で、水素発電により長時間飛行可能なドローンの開発なども行っています。現在では国家電網(世界最大の電力会社)の風力発電点検用途において最大のドローンサプライヤーの地位を獲得しているなど、注目の企業です。

2014年創業のSMD(深圳市宝安区)は、ティルトローターと固定翼の組み合わせたVTOL(垂直離着陸)機などの開発を行っています。それらの機体は、マルチローターに比べて巡航速度が速く、また航続距離も長いため、広範囲でのパトロールや離島・山間部でのロジスティクスにおいて強みを発揮しています。MMC同様、テストフィールドが敷地内にあり、相当な場数をどんどん踏むことができる環境だということがうかがえました。

2015年創業のSVV(深圳市南山区)は、VCとエンジニアリング、2つのセクションを持つ異色の企業でした。特筆すべきは、スタートアップがSVVのリソース(例:高価なマシン、優秀なエンジニア)を小ロットから利用できる仕組みのため、起業へのハードルが下げられること。「深圳とSVVは、水と魚」という比喩がぴったりの、深圳の産業エコシステムが凝縮された空間でした。

SVVから戻った一行は、Drone Fundアドバイザリーボードの尾原和啓氏による最終セッションを経て、全日程の振り返りを行いました。テーマはやはり「深圳から何を学び、日本はどこに活路を見出すべきか」、そして「Drone Fundファミリーとしては何ができるか」。尾原氏や大前が全体をリードしながら、グループごとに自社や個別分野、日本全体や中国市場との関係性など、さまざまなレイヤーに切り分け、結び付け、飛び越えてディスカッションは展開されていきました。各グループからの口頭発表はいずれも積極的かつクリティカルで、非常に前向きな総括ができたように思われます。

そして夕食後も「解散!」とならないのが、やはり千葉道場®。ホテルの会議室を借りられる0時まで、青島ビールを飲みながらのアンカンファレンスです。トークテーマごとにグループ分けをしたものの、流れ次第でくっついたり、細かくなったり。Drone Fundアドバイザリーボード今井大介氏が持参したVRの体験ブースも好評でした。個社の具体的な現場での課題感や、会社経営を行っていく上での悩み、マインドセットの共有が、雑談も交えながら忌憚なく行われました。

(6)おわりに
翌日は思い思いのタイミングで帰途につきました。すぐに帰途についた方や少し観光してから帰国した方、あるいは仕事のためにしばらく深圳に残った方、いろいろな方がいたようです。幸い、いずれの方も香港でのデモ等の影響を受けることもありませんでした。
Drone Fundファミリーは、今回の合宿でまたひとまわり「ファミリー」感を強めて、また世界中、日本中に戻っていきました。次なるブレイクスル―のための本質的な課題は、全参加者それぞれの持ち場、現場、プロダクトのなかにこそあります。深圳合宿での経験はあくまで「鏡」に過ぎず、重要なのはそこから何を学び、次に何をするかです。
先日6月21日には成長戦略閣議決定がなされました。ドローンも、エアモビリティも、2020年代前半には、都市部で空を飛び交うことを前提に法・規制の整備が進められていきます。「千葉道場®ドローン部第4回合宿が、今振り返れば転換点だったな」と、振り返ることのできるような未来を創っていければと思います。

 

Written by Yuta Tsukagoshi / Translated by Tavis Sartin